高山稲荷神社

津軽の山奥にある桃源郷・高山稲荷神社を歩く

高山稲荷神社

青森県のつがる市にある「高山稲荷神社」は、外国人観光客も訪れる注目の観光スポット。季節によってさまざまな表情を見せてくれる高山稲荷神社の魅力について、詳しくご紹介します。

青森の最注目スポット・高山稲荷神社

青森県の日本海側、つがる市に位置する高山稲荷神社は、五穀豊穣、海上安全、商売繁盛のご利益がある神社です。ただ、一般的な神社と異なるのがその規模感。山全体が神社の境内となっている広大な敷地には、見どころがたっぷりなんです。


青森市から車で移動すること1時間。どこまでも続きそうな一本道、通称「メロンロード」を走り続けると、不意に巨大な鳥居があらわれます。これが高山稲荷神社への入り口で、「大鳥居」と呼ばれています。

参集殿や神札授与所を横目に参道を進んでいくと、急な石畳の長い階段が見えてきます。神社の拝殿へは、この階段を上る必要があります。

7月末に伺うと、参道の鳥居には芽の輪くぐりの輪がありました。輪をくぐることで心身を清めて災厄を祓い、無病息災を祈願するというものです。

芽の輪をくぐり、ひたすらに階段を上ります。なんとその数、96段!上り終えた頃にはすっかり息が上がってしまいました。急な階段なので、足腰に自信がない人は少し遠回りですがゆるやかな女坂のルートがおすすめです。

階段を上ると少し開けていて、左手には高山稲荷神社の拝殿(本殿)が堂々と佇んでいます。

高山稲荷神社の境内には、稲荷神社だけではなくさまざまな神様に通じる祠が祀られているのですが、この拝殿は高台にあり、最も大きく存在感のある社です。

拝殿の手前には、涼しげなあじさいの花手水がありました。普段は手水舎ですが、夏季限定で花手水になるそうですよ。その隣には夫婦円満・縁結びのパワースポットである命婦社(みょうぶしゃ)があります。命婦社は女性が男性を後ろから抱きしめているように見えると言われていて、女性に人気のスポットです。

千本鳥居があるのは拝殿のさらに先。急な階段を下りると、これまで歩いてきた鬱蒼と茂る森から一変し、目の前が開けて龍神宮と千本鳥居がある神苑が広がります。

龍神宮は蓮の花が咲く龍神池のほとりに建てられた宮で、太鼓橋で千本鳥居へとつながっています。龍は水神の化身と称えられ、雲を呼び、雨を降らすといわれることから、社殿を火災から守る意味で、龍神宮の社殿の彫刻や天井に描かれているそうですよ。津軽には高山稲荷神社のほかにも龍神・龍王を祀る神社仏閣がいくつかあり、津軽龍神霊場といわれています。神々が宿る龍神を巡ってみるのも面白そうです。

龍神宮のほど近くから、朱色の千本鳥居が蛇行するようにズラリと並んでいます。青空と夏の緑に囲まれてとても眩しく、美しい光景です。

千本鳥居は高山稲荷神社を信仰する地元の農家がいくつかの鳥居を奉納したことがきっかけとなり始まりましたが、神苑にまっすぐ並べることが難しかったため、龍のように蛇行させた千本鳥居が誕生したそうです。現在は全国各地から奉納をいただき、鳥居の数も増えていているそうですよ。

長いように見える千本鳥居ですが、歩き進めるごとに見える景色がどんどん変わっていくので飽きることなく頂上までたどり着けます。夏の時期はあじさいの花と鳥居の朱色のコントラストがすてきです。

終着点の頂上には展望所が設置してあり、記念撮影をしている観光客の方で賑わっています。展望所から眺めると、確かに真っ赤な龍が蛇行しているように見えますね。千本鳥居は京都の伏見稲荷神社をはじめ、全国各地の神社にありますが、千本鳥居によって大きな龍の姿を表現しているのはこの高山稲荷神社だけでしょう。標高が高い場所なので海風が抜けて、少しひんやりとした風が吹いていました。

展望所付近には、もう一つ見どころがあります。それが、数えきれないほどのキツネの像。高山稲荷神社には、全国の稲荷神社でお役目を果たしたキツネの像が御祈祷されて静かに佇んでいるんです。明治時代頃から徐々に高山稲荷神社に集まるようになったそうで、ほとんどが対になって置かれています。この場所だけ別世界に切り離されたかのような不思議な光景が見られます。

千本鳥居までたっぷりと散策したあとは、参集殿の隣にあるお休み処へ立ち寄りました。2023年5月にオープンしたお休み処では、蕎麦・うどんなどの軽食の提供やお土産が販売されています。

お菓子は箱入りのものもありますが、ばら売りもしているのでその場で味わえますよ。

旅人メモ:キツネに混ざった猫の使者?

高山稲荷神社に集まってきたキツネの像たちは、「おいなりさん」と呼ばれる稲荷神社に奉納されていたものです。「稲荷」とは、稲作・農業の神様のこと。稲荷神社でよく見かけるキツネの像は、神様であるお稲荷様の使者として神社に鎮座しているんです。

高山稲荷神社に並ぶキツネの像を見ると表情や姿かたちにそれぞれ特徴があり、一つ一つ見ていくと面白いです。なかには犬のような像や、猫にしか見えない像も…?

旅人メモ:キツネに混ざった猫の使者?

秋の例祭と、季節ごとに楽しめる高山稲荷神社の景色

高山稲荷神社では、四季を通してさまざまな祭典が行われていますが、その中でも年に一度、毎年9月25日に執り行われる例祭(例大祭)は高山稲荷神社で最も重要な祭典となっています。

厳かな雰囲気のなか、神職の方々が列をなし、女坂を上って例祭の会場である拝殿へと向かいます。拝殿に入ると、神前へお供えをする「献幣使参向」という儀式を行い、そのあと津軽神楽を奉納します。

津軽神楽とは、津軽地方一帯の神職によって継承され、各神社の祭典で奉献されている舞です。各地で継承されている演目は10演目ほどあるそうで、高山稲荷神社では例祭と、その前日の前夜祭のときにだけ披露されます。笛や太鼓の奏楽に合わせて神官が演舞をするさまは格式高く、拝殿の絢爛な雰囲気も相まってとても美しく優雅です。

ちなみに前夜祭では拝殿前に焚かれたかがり火の前で津軽神楽が奉納され、御祈祷が行われるそうです。炎に照らされながら津軽神楽を舞う姿もまた美しいのでしょうね。

高山稲荷神社の神礼授与所では、御朱印がいただけます。千本鳥居や龍神宮など、いくつかの中から柄を選べます。「おいなりさま」のキツネにちなんだおみくじや、大鳥居を模した絵馬もあり、旅の記念になりそうです。

例祭の頃、千本鳥居を囲む山々はまだ紅葉はしていませんでしたが、季節が進むにつれて景色がガラリと変わるのも、高山稲荷神社の魅力です。

雪が降り積もり、池が凍った冬景色では、千本鳥居の朱色が映えます。まるで時が止まったかのような、水墨画のような景色。他県の千本鳥居では見られないような幻想的な風景です。

春を迎えると千本鳥居の周辺にある八重桜が咲いて、雪景色とは全く印象が異なる華やかな雰囲気に。山に囲まれた場所なので、桜が咲くのは少し遅めです。池に咲く菖蒲や蓮、藤、あじさい、シャクナゲなど、季節を彩る花も、景色と一緒にぜひ楽しんでみてくださいね。



旅人メモ:津軽の豪族・安藤氏と高山稲荷神社

七里長浜と呼ばれる日本海に面した海岸のすぐ近くにある高山稲荷神社。高台からは美しい日本海が望めます。

鎌倉時代、安藤氏という豪族が十三湊を根城に日本海での交易を盛んに行っていて、津軽を席巻していました。高山稲荷神社が創建された年代は明らかではありませんが、鎌倉時代から室町時代にかけてこの辺りを統治していた安藤氏の創建と伝えられているそうです。

つがる市の隣町・鯵ヶ沢町には、安藤氏にちなんだ地酒「安東水軍」があります。白神山地の湧き水と県産米を使用して作られた日本酒を、ぜひご賞味あれ。

旅人メモ:津軽の豪族・安藤氏と高山稲荷神社

【基本情報】

高山稲荷神社

住所:つがる市牛潟町鷲野沢147-1

お問い合わせ先:0173-56-2015

参拝時間:9:00~17:00

休業日:年中無休

つがる市はスイカとメロンの名産地!

高山稲荷神社があるつがる市は、スイカとメロンの一大産地。日本海に面する広大な砂丘地帯で栽培された「屏風山西瓜」はブランドスイカとして確立していますし、青森県のメロンの生産量は全国5位で、そのうちの7割がつがる市の屏風山地域で栽培されるメロンなんですよ。

高山稲荷神社から鯵ヶ沢方面に向かって真っすぐ伸びる道路は「メロンロード」と呼ばれていて、低いトンネル状のハウスのなかには収穫を控えたスイカやメロンがゴロゴロしています。時期になると道路脇に直売所の露店が並び、獲れたてのスイカやメロンを購入できますよ。味見させてくれるお店もあるので、味を確かめてから購入したい方は露店での購入がおすすめです。

道の駅もりたアーストップでも、7~9月のスイカ・メロンの収穫時期になると特設テントでスイカとメロンを販売しています。特産のタカミメロンをはじめ、レノン、アーバンデリシャスなど、さまざまな品種のメロンが並び、甘い香りに包まれます。

道の駅もりたアーストップで大人気なのが、パン工房TATSUYAのメロンシェイク!

生のメロンを果肉ごと贅沢に使っているため、メロンの味と香りがしっかりとしていてとても贅沢なシェイクです。ここでしか味わえないメロンシェイクは、ドライブのお供にもぴったりですよ。

【基本情報】

道の駅もりた アーストップ

住所:つがる市森田町床舞稚桜4-1

お問い合わせ先:0173-26-4488

営業時間:9:00~18:00

定休日:年中無休(元旦が休みの場合あり。詳しくはホームページをご覧ください)




津軽の奥地にある高山稲荷神社の魅力について、たっぷりとご紹介しました。これでもまだ、高山稲荷神社の全てを伝えきれてはいないのです。ゆっくりとすみずみまで散策して、高山稲荷神社の魅力を体験してみてください。何度でも訪れたくなる、不思議な場所です。


※高山稲荷神社の「高」は、正式には「はしごだか」です。

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