りんご七変化

実も皮も葉も枝も。食べるだけじゃない青森のりんご

りんご七変化

りんご王国・青森では、りんごが思いもよらない姿に大変身。

本来捨てるはずのものを活用したり、幹や枝葉を加工したり、食べるものから飾るものまで、新たな製品も生まれています。

青森の人にとってりんごはただ特産品であるだけではなく、暮らしの一部。

りんごを愛し、誇りに思っているからこそ、余すことなく大切に消費しています。

りんごの捨てる部分が変身!

本来捨てるはずの部分を加工して生まれた製品や、新たな方法で今までと違う味わい方ができる製品など、作り手の情熱が生み出す、りんごの新たな価値に注目です。

~未成熟りんごが弘前ブランドへ! テキカカシードル~

弘前市にあるもりやま園は、りんごの歴史と深い関わりを持つ土地で、明治から100年以上続くりんご園を営んでいます。代表の森山聡彦さんは、摘果作業時に捨てられてしまう未成熟りんご「摘果りんご」を何かに活用できないかと、5年の歳月をかけて何度も研究・試作を重ね、2018年「テキカカシードル」を発売しました。


食事に合うシードルとして開発されたテキカカシードルは、摘果りんごのもつ酸味と渋みがアクセントの、甘すぎずすっきりとした味わいです。

営業担当の引田裕さんが飲食業界に従事していた経験を活かし、全国の飲食店をまわって取扱店を広げていきました。

なんと2019年にはシードルの国際品評会「ジャパン・シードル・アワード2019」で大賞を受賞し、現在も着実にファンを増やしています。


もともと捨てられるはずの摘果りんごは、処分にも多くの時間と労力を要します。

「捨てることに時間をかけるのではなく、作ることに時間を費やしたい」と語る森山さん。

摘果りんごの活用方法を考えることは、りんご農家の働き方を考えること。

テキカカシードルは、摘果りんごの価値を生み出し、りんご農家の未来を作っていくシードルです。


もりやま園

~りんごで作るバラの花 アプローズン~

アップル+ローズ+フローズン=「アプローズン」。

アプローズンはその名前の由来のとおり、薄くスライスした赤い果肉のりんごをバラの花のように成形し、急速冷凍させた製品です。

赤い果肉のりんごは、普通のりんごよりも酸化が早いため、おもに加工されて流通することが多い品種。果物そのものの美味しさと美しさを味わってほしいという思いから、アプローズンが生まれました。廃棄部分は芯のみ。 一つ一つていねいに手作業で作っています。


「自分がやりたいことには、いつもりんごが関わっていました。」と語るbloomin代表の黒田和瑚さん。実は学生時代から、RINGOMUSUMEの妹分・アルプスおとめやミスりんごとして活動してきた経歴の持ち主です。

自分のやりたいことや働き方を考えるうち、いろいろな人との出会いがきっかけとなり、大学在学中に「bloomin」を起業しました。

夏には、アプローズンや青森県産フルーツを使った「ごろごろフルーツサイダー」やかき氷などを移動販売車で販売しています。

りんごのように真っ赤なボディに、ギンガムチェック柄がアクセントの可愛い車が目印です。


グラスに浮かべると、まるで花が咲いたように美しいアプローズンには、

青森県産りんごのおいしさがぎゅっと詰まっています。


bloomin

旅人メモ:シードル試飲マシーン
~自販機感覚で飲み比べ~

館内にシードル工房を構えるA-FACTORYには、2階にシードルのテイスティングバーがあります。

販売している8種類のシードルは、アルコール度数低めのスイートから、りんごの香りと甘みをバランスよく楽しめるスタンダード、お酒好きに人気のドライまで、時期によってセレクトも変わります。

この日も県外から来たお客様が「全制覇します!」と試飲を楽しんでいました。


隣接するレストラン「ガレッテリア・ダ・サスィーノ」ではプロシュートやチーズなどのフードを注文することができ、シードルと一緒に楽しむことができます。


また、1階にあるガラス張りの「魅せる工房」では、シードルやアップルソーダ、アップルブランデーの醸造工程をガラス越しに見学することができます。

りんごの収穫時期には、りんごの果汁を絞る作業(搾汁)が見られるかも!


テイスティングバーで販売しているシードルは、すべて1階のフードマルシェで販売中。

飲み比べをして自分好みのシードルを見つけましょう。


A-FACTORY

旅人メモ:シードル試飲マシーン
~自販機感覚で飲み比べ~

りんごの枝葉が変身!

りんごの葉や枝を煮出して染めた糸や布、りんごの木の皮を使った工芸品など、食べるだけではない、目にも美しいりんごの味わい方をご紹介します。

~優しい色合いにほっこり りんご草木染めこぎん糸~

青森市新町にある夜店通りを歩いていると、窓から見える色とりどりのこぎん糸。

虹色工房 1Chi(イチ)では、店主の菅原美佳さんがすべて手作業でこぎん糸を染めています。


「私はこぎん作家ではなく、糸屋なんです」と話す菅原さんの言葉通り、1chiの魅力は、何と言ってもその豊富な糸の色の種類。こんな色の糸があったらいいのに…という思いがきっかけで染めはじめ、今ではその種類も数百にのぼります。

人気の草木染めシリーズの中には、農家さんからもらったりんごの葉や枝を使って染めたこぎん糸も。煮出す時間によって黄色の濃さが変わり、煮ているとりんごのいい香りがするそうです。


現在、店舗の営業のほか全国の百貨店での催事などで毎日大忙しの菅原さん。

こぎん糸を売り始めた頃は、カラフルな糸に対し「これはこぎん糸ではない」という声もあったそうですが、1chiのこぎん糸をきっかけに、若い人や子どもたち、たくさんの人にこぎん刺しを楽しんでもらいたい、という強い想いで糸を染め続けてきました。

「毎日“かわいい〜!”って一人で言いながら染めています」と笑う菅原さん。

愛おしいと思いながら作られた糸だからこそ、全国の人に愛され、ファンを増やし続けています。


虹色工房1chi(instagram)

~木目の味わいが美しい 林寿~

乾燥させ、細長くカットしたりんごの木の皮を、1本1本ていねいに編みあげていく「林寿(りんじゅ)」。

林寿が生まれたのは昭和50年頃。

当時、役目を終えたりんごの木は伐採され、薪ストーブに使用するのが一般的でしたが、

元板柳町教育長の野呂光雄さんが「100年近く頑張ったりんごの木を、ただ灰にするのは忍びない」と考案したのがはじまりでした。


その後、りんご農家の女性たちの冬の仕事として伝わり、田中スエさんが「林寿工芸品」として製品化させました。現在は田中さんの親族の三戸さんが引き継いで製作しています。


「ふるさとセンターがなくならない限り、ずっと作り続けたい」と語る三戸さん。

林寿は昔ながらの太い幹を持つりんごの木の皮でなければ作れず、現在ではとても貴重な材料となっています。

編み目が美しく、使えば使うほど色に深みが出る林寿。りんごの町・板柳に残していきたい工芸品です。ふるさとセンター内にある林寿工房では、小銭入れやペンケース、貼り絵などの製作体験ができます。ほか、りんごの草木染めやりんごの木の灰を釉薬に使用した陶芸体験、りんごファイバーを使ったお菓子作りなどの体験もできます。


りんごの町で、りんごづくしの体験を楽しみましょう。


板柳町ふるさとセンター

旅人メモ:りんご葉の茶
〜人にも自然にもやさしいお茶〜

農薬や化学肥料を使わずに育てたりんごの葉から誕生した、ほんのり甘い香りの美しいお茶。

それが、医果同源りんご機能研究所の「りんご葉の茶」です。


りんご葉の茶が生まれたのは、農学博士であり長年りんごの研究を続けてきた所長の城田安幸さんが、中国で古来から葉をお茶にして飲んでいた「湖北海棠(こほくかいどう)」というりんごの品種の存在を知ったことがきっかけでした。

湖北海棠は日本では絶滅状態にあった品種でしたが、研究用に保存されていた枝を譲り受け、接ぎ木という方法で増やすことに成功したのです。


構想から10年、何度も試作を重ねて完成させたりんご葉の茶は、有機JAS認証の農園で栽培されたりんごの葉を、同じく有機JAS認証の茶工場で焙煎しています。地元デザイナーが考案した美しいパッケージも特徴的で、5個入りパッケージはなんとりんごの葉の形をイメージしたもの。

うっすらと見える模様は、湖北海棠の葉のシルエットなのだそうです。


人にも自然にもやさしく、ていねいに作られた医果同源の商品。

りんご葉の茶に含まれるポリフェノールの一種・フロリジンという成分には、抗加齢効果・血糖値の上昇を抑える効果があるとされています。


青森の日常にあるりんごと同じように、「りんご葉の茶」もたくさんの人に飲んでほしい、やさしいお茶です。


医果同源りんご機能研究所


旅人メモ:りんご葉の茶
〜人にも自然にもやさしいお茶〜

りんごがインテリアに変身!

身近にあると見過ごしてしまいがちですが、あらためてじーっと見ると、りんごってとっても可愛い果物。

そんなりんごそのものの可愛さ・美しさをインテリアに活用してみてはいかがでしょう。

~ゆらめく灯りに癒やされる BOTANICAL Candle / Apple~

生まれ育った藤崎町に工房をもつYOAKEnoAKARI。

りんご農家の家に生まれ育ち、そばにはいつもりんごがありました。 

そんなYOAKEnoAKARIが作るボタニカルキャンドルからは、 ”青森ならでは”というりんごのイメージを超え、植物そのものの美しさを感じることができます。 


独学で何度も試作を重ね誕生したボタニカルキャンドルは、通年で販売されているアップル・オレンジ・ラベンダー・マリーゴールド、ローズ、ブルーハーブの6種類と、春限定販売のさくら、ミモザの2種類が定番商品。


長年作り続けているボタニカルキャンドルに対し、作家自身も「何回作っても、綺麗だなあって思います。同じ種類をずっと作り続けるって、よっぽど好きなんだろうね〜。」と笑います。

もともと手先が器用な方だそうですが、キャンドル作りは季節によって温度管理の方法が異なり、集中して作らないと、今でも失敗してしまうことがあるそうです。


全国各地で高い支持を受けている、YOAKEnoAKARIのキャンドル。

繊細な作業が生み出す美しいキャンドルが、火を灯す楽しみを与えてくれます。


YOAKEnoAKARI

〜大きな夢がつまった小さなりんご MINI FUJI-CO~

小さくて真っ赤なかわいいりんご「ミニフジコ」は、三戸町生まれのミニりんご。

もともとは、りんご農家の水野益治さんが開発した「ミニふじ」という品種がはじまりでした。

熱心なりんご研究家だった水野さん、品種改良を繰り返し10年以上かけてミニふじを誕生させました。ミニフジコの「やっと、あなたに逢えた。」というコピーは、水野さんの想いを表現しているようです。


ミニふじは、三戸町にある水野さんの畑と、その近隣でしか安定して栽培することができません。

そんな貴重なミニふじを、地元の商社・株式会社SANNOWAがブランディング。

デザイナーのこだわりが詰まったかわいらしいパッケージに包まれて、2020年「ミニフジコ」としてデビューしました。


4〜5センチほどの小さなミニフジコ。

食べてみると、食感の良さと小さな実につまった甘酸っぱい果汁に驚きます。

りんごといえば津軽のイメージが強いですが、南部で収穫されるりんごは熟成された味わいが特徴なのだそうです。

そのまま食べるのはもちろん、りんご飴や、鏡餅やクリスマスツリー、スワッグなどに使用して飾っても素敵です。


ミニフジコは、毎年11月頃に発売。今年の発売をお楽しみに。


MINI FUJI-CO

旅人メモ:「りんごのこけし」と「はとぶエッ!」
~りんごモチーフのネオ郷土玩具~

黒石市こみせ通りにあるIRODORIには、青森の作家が作る津軽ならではの雑貨が多数並びます。中でも人気なのが、りんごモチーフの「ネオ郷土玩具」。


全国各地にファンを持つ、大人気の創作こけし作家・COOKIES(クッキーズ)が作る「りんごこけし」は、出店イベントや全国の取扱店でも人気の商品です。 

「自分が作る創作こけしがきっかけとなり、伝統こけしにも興味を持ってもらえたら」と語るCOOKIESの藤田光治さん。

りんご以外にも、COOKIESならではのユニークなモチーフも多数。愛くるしい表情に惹かれ、全種類集めたくなります。


りんご柄とほっかむり、ちょっぴりとぼけた表情がポイントの「はとぶエッ!」は、弘前市の伝統的な郷土玩具である下川原焼の工人・阿保正志さんと、青森で活動するイラストレーター・トヨカワイラスト研究室とのコラボ商品。

阿保さんが作る鳩笛のかわいさを活かし、その時のひらめきで絵付けを施しているので、いつどんな鳩ちゃんに出会えるかはお楽しみ。


手作り雑貨体験工房IRODORI

旅人メモ:「りんごのこけし」と「はとぶエッ!」
~りんごモチーフのネオ郷土玩具~

青森に住んでいると、身近で日常にある果物・りんご。

しかし、多くの手間ひまをかけ、自然災害や病気のリスクを乗り越えて実ったりんごは、まさに奇跡のような果物。

そんなりんごをさらに変化させて作った製品もまた、 研究や試作を繰り返してできたものばかり。 

ぜひ手にとって、味わって、作り手の想いや情熱を感じてほしいです。

  • エーファクトリー(A-FACTORY)
  • 手作り雑貨体験工房IRODORI
  • 板柳町ふるさとセンター

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