能町みね子の「あんたは青森のいいところばかり見ている」(第21回)

能町みね子の「あんたは青森のいいところばかり見ている」(第21回)

シリーズバス終点の旅・おまけというよりも本編 舟岡集落、謎の螺旋

 津軽半島の終点「元宇田」の旅をひととおり終えた私たちだが、私には1つの課題があった。行きがけに見たこれである。

謎めいた構造物。

 山が迫る海際の、舟岡という狭い集落をバスで通過するとき、山のふもとに当たる部分に螺旋状の謎のタワーが見えたのだ。のぼっても何もなさそうな場所に見えるけど、これはなに?


 ということで、帰り際に改めてちゃんと寄りました。

こんなに近くに来て見ても、なんのためのものなのかが分からない。

 大きな民家の後ろに堂々とそびえ立っている。先に言っておくと、手前にあるその民家とはおそらく何の関係もないです。

あっけなくたどりつけそう。

 たぶんここが入口。矢印付きの案内標識くらいあってもよさそうなものだけど、全く何もない。立入禁止とも書かれていない。謎すぎる。立入禁止じゃなさそうなので、行きます。

螺旋階段(?)まで行く道も、階段。 ここまで来ると、やっぱり螺旋階段みたいだな、と分かってくる。けど、目的がやっぱり分からない。のぼっても何もなさそうな気が……。観光用の展望台だとしたら、何の標識もないのは変だし。

ビル3〜4階くらいはあるから、そこそこ迫力がある。 階段まで来たらさすがに立入禁止のロープがあるかな?と思ったら、それもなかった。進んで良さそう。のぼっちゃいますよ。

のぼったところの、海側の景色です。

 ぐるぐる螺旋階段を上り、いちばん上まで来ました。うん、津軽湾が見えて景色は気持ちいいです。展望台を作るほどの場所かな?とは思いますが。

 そして、ここから後ろを向くとですね……。

光加減のせいで神秘的になってしまった。

 なんか、階段を上りきったところからさらに山のほうに通路が続いてるんですよ!なんですかこれは。わからない。上までのぼってもやはりこの構造物の意味が分からない。

少し進んでみると、なかなかこれは……。

 でも、見た感じ、これ以上進むのは危険そうな感じがするんですよ……。なんだこりゃ。

奥の左上方向にも道(階段)がありそうだけど、ちょっとね……。

右に橋を進めばさらに何かありそうだけど、橋の上にも草が生えている状態なので、そもそも安全性に疑問あり。

 元宇田集落で山の上の神社にのぼらせたあと、私はもちろん陸奥桜氏と瑞の富士氏をここにも連れてきている。彼女らは健気に私についてきてくれているが、さすがに彼女らはかつての2メートル氏のように「この先も突き進んでいきましょう!」というスタンスは取らない。私もそこまではできない。

「撤退します」

「分かりました」

――一度階段を下りて道路に戻った。さてどうする。

こんな時は、「第一村人」に質問だ。


 近くに、この集落唯一と思われる商店があったので、飲み物を買いがてらちょっと聞いてみる。お店のおじさまは、ここに長く住んでいるとのこと。

「少し先に、山のほうにのぼっていく螺旋階段みたいなの、ありますよね」

「ああ〜、なんかある……螺旋階段?だったかな?」

 一問目からちょっと雲行きが怪しい。

「あそこ、行ってみたんですけど、目的が分からなくて……。何のためのものですか?」

「えっ!?わかんない。行ったことないよ。のぼったこともないから(笑)」

 なんと!地元の方ですら分からないというか、存在すらあまりちゃんと把握していない様子だ。私からすればあんなに違和感があるのに、住んでいるとあるのが当たり前すぎて、忘れちゃうのかな?

 ほかにもいくつか聞いてみたけど、30年前くらいにできた気がするが正確な時期は分からないしその時のことも覚えてない、とのことで、かなり解決までは

難航しそうな感じ。ただ、「昔はあそこから神社に行けたはずだが、神社のために作られた道ではない」という証言を引き出すことができた。

 ここを海沿いに100メートルほど南下すると、やはり山側にのぼったところに「船岡久須志神社」という神社がある。なんらかのヒントを求めて行ってみることにしました。

思ったよりも大きな神社だ。そして当然また長い階段である。 階段を上り、二の鳥居、三の鳥居をくぐり、写真に見えるつきあたりっぽいところまで上りきると、さらに左上のほうへと階段はまだまだ延びている。右側には大きな地図看板があった。

杉の子わんぱくの森公園……? 神社じゃないの?

 神社だと思ってのぼってきたのに、急に、ここは公園ですよという自己主張が登場。

 この公園、あとから調べても詳細がよく分からない。地図を見る限り、神社を含めてこのへんの山一帯に及ぶ壮大な公園のようである。


 ただ、周囲の様子を見る感じ、どうも神社周り以外は長いこと整備されていないのかもしれない。ここに来るまで看板らしきものもないし、公園として町民に開かれている様子があまりないのだ。

 で、この地図看板を見ていて、気づいた。

右端のこれ、もしかして階段?


 この感じ、もしかしてさっきの螺旋階段への入口のところを表してない?あんなに目立つ螺旋階段自体を描いてないのはどうかと思うけど……。

 この地図が正しいとしたら、螺旋階段の上のあの廃道みたいな通路をずーっと歩いて行くと「公園」の中を通って神社まで行けるし、どうやら道路から公園側に上っていける道がもう一本ある(地図上の、川に沿ったような道)ということだね。

 きっとあの螺旋階段は、やる気満々で公園を整備していた際に思い切って作った、集落側から一気に山のほうに上れる近道だったんだろう。一応謎が少しだけ晴れた気がする。


 さて、この看板よりも本殿はもっと山の上で、だいぶ遠そうである。

本殿はさらにこの階段の上らしい。

 本殿まで行って、そこからさらに「公園」の中の廃道かもしれない道をたどって、さっきの螺旋階段までたどりつければ、地図の正しさが証明されて、螺旋階

段の目的もある程度証明できるかも。さあ、そこまでやる必要、あるかなあ?あると思う?

「ないと思います」

だよね。私もそう思った。体力の限界。


 ということで、私は探索をここまでで強制終了とした。

 もしこの公園の詳細を知っている人がいたら、ぜひ教えてください。さらにいえば、もしこの螺旋階段の先の通路に突進していける猛者がいたら、レポートしてみてください。



おまけ

船岡久須志神社の参道階段にはなぜかウニがやたら落ちていた。どういうことなんだ。謎の多い集落である。


by 能町みね子
【プロフィール】
北海道出身。文筆業。大相撲好き。南より北のほうが好きで青森好き。著書に、『逃北』(文春文庫)、『結婚の奴』(平凡社)、アンソロジー小説集『鉄道小説』(交通新聞社)、『ショッピン・イン・アオモリ』(東奥日報社)など。

当ブログの連載から誕生した『デットエンドで宝探し~あんたは青森のいいところばかり見ている~』(hayaoki books)が大反響!発売中!

 

あわせて読みたい記事
能町みね子の「あんたは青森のいいところばかり見ている」(第1回)

能町みね子の「あんたは青森のいいところばかり見ている」(第18回)
能町みね子の「あんたは青森のいいところばかり見ている」(第19回)
能町みね子の「あんたは青森のいいところばかり見ている」(第20回)

掲載されている内容は取材当時の情報です。メニュー、料金、営業日など変更になっている可能性がありますので、最新の情報は店舗等に直接お問合せください。

ページトップへ