クリエーティブ県あおもり❸ ホテルスタッフ全員がクリエイター!? 〜 「青森文化のテーマパーク」 青森屋 by 星野リゾート

みちのく祭りやの様子。企画・演出・主演までスタッフが行なっている。 ※写真は青森屋提供「青森にしかない」ものを生み出している最先端のクリエイターにインタビューを行い、青森が誇るクリエーティブ・マインドの秘密を探るインタビューの第3回。
今回は、青森県の観光を牽引し続ける「青森屋 by 星野リゾート」を訪れました。お話を伺ったのは、総支配人の須道さん、支配人の山形さんです。
彼らの目標は、単にホテルの宿泊者数を増やすことではありません。掲げるミッションは「世界中に青森のファンを増やす」こと。ホテルという枠を超え、地域全体をクリエーティブにプロデュースする彼らの熱意と組織の仕組みに迫ります。
聞き手:クリエイティブディレクター 嶋野裕介
「世界中に青森のファンを増やす」というミッション

嶋 野: 「世界中に青森のファンを増やす」というミッションがあると伺い、大変感銘を受けました。ホテルでありながら、青森全体を視野に入れていることが、青森屋さんのクリエーティブ・マインドの源泉だと感じています。このミッションに込めた思いを教えていただけますか?
須道さん(総支配人): ありがとうございます。私どもは、お客様に「青森を体験していただきたい」という思いが根底にあります。一般的な温泉旅館として満足していただくことはもちろんですが、それだけでは終わらない。ここで過ごす時間が、青森という地域そのものの魅力に気づくきっかけになることが大切だと考えています。
山形さん(支配人): 施設の至る所に、祭りや文化、食の要素を散りばめているのはそのためです。例えば、地元の方にとっては馴染みがあっても他県からお越しの方には珍しい食材をお食事で提供したり、館内の随所に青森県内の工芸品を飾り、その地域の物語を伝える工夫をしています。お客様が青森屋をきっかけに、県内の様々なエリアへ足を運んでくれることが私どもの理想です。
嶋 野: まさに、ホテルでありながら、「青森文化を体験できる場所」としてデザインされているのですね。この戦略的な視点こそが、青森屋のクリエーティブさの根幹だと感じます。

スタッフ発の企画&主演が、前例のない“熱狂”をつくる

嶋 野: 青森屋の象徴的な体験といえば、やはり「みちのく祭りや」のショーです。これほど本格的で熱狂的なショーを、従業員の方々が演じていることに驚かされます。
須道さん: 「みちのく祭りや」は2006年の誕生以来、私どもの最も大切なコンテンツの一つです。実はこれ、上からの指示ではなく、当時の若手スタッフたちの「自分たちが最高の青森の祭りを届けたい」という自発的な提案から始まりました。
嶋 野: 従業員の方が、どうやってあのレベルの演奏技術を習得されるのでしょうか?
山形さん: 演者たちは、青森ねぶた祭や八戸三社大祭など、地元の囃子団体に直接指導を仰ぎ、一から技術を習得しました。私どものスタッフは、フロント業務や調理、客室対応といったマルチタスクをこなしますが、その傍らで「みちのく祭りや」の演者でもあります。
嶋 野:スタッフひとりひとりが地域文化の担い手となることで、おもてなしの熱意が生まれているんですね。スタッフ全員が、テーマパークの「キャスト」であり「クリエイター」であるという熱意が、お客様に伝わっているのだと感じました。
須道さん: いまでは「みちのく祭りや」に出るために入社を希望される方もいます。練習などはすごく大変なのですが、ここも自分たちで行うことで、お客さんとスタッフの一体感や会話が生まれる大切なキッカケになっていると思います。


上から「弘前ねぷた」「八戸三社大祭」「五所川原立佞武多かぐや」。先述の「青森ねぶた」とあわせて、青森の4大祭りのすべてのオブジェ(しかも有名作品)が同時に展示。青森のすべてを、本物で楽しめるのはここだけだと思います。※「立佞武多かぐや」については、第一弾ブログに登場された、ねぷた表現師・忠汰さん作です https://www.marugotoaomori.jp/blog/2024/08/27259.html
「魅力会議」が引き出す新しい青森の魅力と、伝え方
嶋 野: 青森屋は、日本の伝統的な要素を取り入れながらも、決して古臭くならず、モダンで洗練されたデザイン性を保っています。この「青森らしさ」と「デザイン性」の両立を可能にしている組織的な仕組みはありますか?
須道さん: それは、私どもの核となる「魅力会議」という仕組みが機能しているからだと思います。
嶋 野: 具体的にどんなものですか?
須道さん: 季節ごとに10〜15名のスタッフが参加し、お客様に喜んでもらうための新しい企画を立案・実行する仕組みです。組織はフラットで、年齢や役職に関係なく、自由な意見表明ができる場です。スタッフの斬新なアイデアが、すぐに企画として採用され、実現していく。これが、青森の伝統を尊重しながら、常に新しい視点を取り入れられる秘訣です。
須道さん: 現場のスタッフが、お客様の反応を最もよく知っています。その意見を吸い上げ、常に新しい体験を生み出し続ける。これが、青森屋が「古くならない」ためのエンジンです。企画が走り出すと、広報担当のスタッフがすぐにプレスリリースを作成するなど、意思決定から実行までのスピードも速いです。
嶋 野: スタッフの企画を採用するときの判断基準はどうされていますか?
須道さん: 「のれそれ青森(青森の魅力を目一杯伝える) ~ひとものがたり~」という大きなコンセプトがあるように、青森の素晴らしさを伝えることが一番です。その上で、マニアックすぎないか、どうすれば伝統的なものを今の若い人に魅力的にうつるかをみんなと考えています。そのためにも、普段から会社の目指す方向性をまずはちゃんと理解してもらい、その上で自分たちの意見を企画にしてもらうようにしています。
嶋 野: なるほど。スタッフ一人ひとりが、思いつきではなく、ちゃんと大きな指針を理解した上で、企画立案に参加しているのですね。だからこそ、お客様にとって本当に魅力的で、デザイン性も高いサービスが生まれていて、とってもいい循環だと思いました。最後に、これから挑戦したいことはなんですか?
須道さん: 「世界中に青森のファンを増やすこと」です。私もスタッフも、みんな青森が大好きで素晴らしいところだと信じています。これから先もずっと青森が観光地として選ばれ続けるためにも、ノンバーバルでも通じる青森の魅力をここから発信していきます。

取材後記
青森屋は、もう単なる宿泊施設ではなく、「青森文化のテーマパーク」だと感じました。
須道さん、山形さん、そしてすべてのスタッフに共有されている「世界中に青森のファンを増やす」という熱いミッション。これが、従業員の自発的な活動(みちのく祭りや、魅力会議)を促し、ホテル全体が青森の魅力を体現する場となっています。

伝統的な青森らしさを大切にしながら、時代にフィットするデザインとサービスを維持できるのは、従業員一人ひとりの熱意と、それを支える組織の柔軟性があるからです。青森屋は、青森を旅したい人にとって、その魅力を最も深く、最も楽しい形で体験できる「最高の一歩」となります。ぜひ一度宿泊されてみてください!


Written by 嶋野裕介
【profile】
マーケティングプランナー、営業職を経て現職。国内外で100以上のアワードを受賞。著書「なぜウチより、あの店が知られているのか? ちいさなお店のブランド学」。
奈良美智さんとホタテが好きで青森にハマり、30回以上訪れています。青森最高です。
| 青森屋 by 星野リゾート | |
|---|---|
| 場所 | 青森県三沢市字古間木山56 |
| TEL | 050-3134-8094 (予約) |
| Webサイト | 青森屋 by 星野リゾート【公式】 |
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