『冬の青森で鉄道旅 〜八戸線沿線めぐりと「TOHOKU EMOTION」〜』

『冬の青森で鉄道旅 〜八戸線沿線めぐりと「TOHOKU EMOTION」〜』

「TOHOKU EMOTION」に乗り、大満足でほろ酔いの私


はじめまして、漫画家&文筆家の「やすこーん」と申します。全国の鉄道に乗りながら、駅弁や駅そば、おいしいお酒や温泉を楽しむ旅をしています。こちらで青森の鉄道旅について、書かせていただくことになりました。どうぞよろしくお願いいたします。

そして実は青森県出身です。しかし周りに伝えると「え、そうなの?」と言われてしまうくらい知られていません。というのも、青森に住んでいたのはたった1年ほど。親がいわゆる転勤族で、たまたま生まれ落ちた地が「青森」だったというわけです。住んでいた時間は短くても、私にとっては思い入れのある土地として「出身は青森」と言い続けています。

太平洋沿岸を走る「TOHOKU EMOTION」(撮影:坪内政美)

 

今回のテーマは「冬の青森で鉄道旅」。
その1本目として1泊2日、JR八戸線の旅をご案内いたします。1日めは八戸〜鮫間を楽しみ、2日めは久慈まで「TOHOKU EMOTION」に乗車します。

「みなと食堂」の名物、平目漬丼せんべい汁セット

八戸駅からJR八戸線に乗り、まず降り立ったのは陸奥湊駅。駅から徒歩3分ほどにある「みなと食堂」の「平目漬丼」が目当てです。セットの汁物は、せっかくなのでプラス料金で青森名物の「せんべい汁」に変更しました。

鮪の漬け丼はよく見かけますが、平目の漬けは初めて。まず、見た目が美しい。ほどよく脂がのった平目は、漬けと言ってもタレはほんのり、平目自体の味が濃くてびっくり!
始めは卵黄を崩さず、半分ほどから卵黄とからめて、一気に食べてしまいました。午前中で売り切れることもあるくらい人気だという理由がわかりました。

八戸酒造外観

いったん駅まで戻り、そこから約10分歩いて八戸酒造へ向かいます。八戸酒造は1755年から続く歴史ある酒造。現在8代目の蔵元が酒造りを行っています。

八戸酒造ではお酒の試飲ができる

こちらでは蔵見学、そして有料で試飲ができます。八戸酒造の代表的な「男山」は100年以上前から造られています。私が好きな「八仙」は28年目だそうですが、実に様々な種類があり、試飲で好みを見つけるのも楽しいです。

鮫駅前で記念写真

今度は鮫駅へ移動しましょう。鮫駅前には、鮫のオブジェがあり、中に入って写真を撮ることができます。だいぶ前に来た際に撮った写真と見比べてみたら、同じポーズをしていました。人ってそうそう変わらないですね。

長い階段を上る蕪嶋神社

そして徒歩15分ほどの蕪嶋神社へ。蕪嶋神社はウミネコの繁殖地としても知られる場所。神社には弁財天様が祀られているので、商売繁盛をお願いしました。また、蕪嶋神社の「蕪」と「株」をかけて、株価上昇のご利益もある、と最近人気だそうです。

「サバの駅」の八戸銀サバづけ丼

夕方頃に本八戸へ移動。夕食は、日本で唯一のサバ料理専門店という「サバの駅」で、おいしいサバをたくさん食べました。

銀サバの串焼きは、串に刺して焼かれたサバが、まるでお肉のよう。旨味と食べ応えがすごいです。八戸銀サバづけ丼は、とろけるサバとご飯のバランスに唸りました。

「洋酒喫茶プリンス」店内

食後は魅力的な屋台が並ぶ、みろく横丁をぶらぶらと歩いて、「洋酒喫茶プリンス」へ。一見入りにくそうなドアを開け、入るとびっくり! きらびやかな店内、そして天井一面に名刺がびっしり貼られていました。

美しいモヒート

カウンターに座って名物だというモヒートを頼みます。御夫婦と息子さんの3人のお話が、とても楽しい。アットホームで居心地がよく、つい長居してしまいたくなります。

こちらでも色紙にサインを描かせていただいたので、店内のどこかに飾られていると思います。

八戸駅ホームに停車中の「TOHOKU EMOTION」

さて、翌日。

いよいよ楽しみにしていた「TOHOKU EMOTION」ランチコース(往路、八戸〜久慈)を体験します。「TOHOKU EMOTION」の入線は10時8分。それを見るために早めにホームに入って待機しました。

あ、入線というのは、列車がホームに入ってくることです。私の場合、特に観光列車は、入線から見学し、気分を盛り上げていきます。

「TOHOKU EMOTION」ロゴマーク

高級感のある白い車体がホームにゆっくりと入ってきました。外観は「走るレストラン」をイメージしているそうで、確かに漆喰壁の一軒家レストランを思わせます。

その後30分ほど列車はホームに停車。中では忙しそうにテーブルセッティングや食事の準備が行われていました。

1号車は「コンパートメント個室車両」

10時55分、ドアオープン。本物のレストランのようにドア横では支配人が出迎えてくれました。乗車証を見せて乗り込みます。

いつもは「ひとり旅」の私ですが、「TOHOKU EMOTION」は2名以上でないと予約できないので、今回は青森の方にご一緒していただきました。

2号車ではシェフたちが調理しているところが見られる

列車は3両編成で、1号車が「コンパートメント個室車両」。1室ずつに壁と半ドアがあり、7つの個室になっています。今回の私の席はここ1号車にあります。

2号車は「ライブキッチンスペース車両」で、こちらでシェフが料理を作っています。ずらりと並んだお皿も壮観です。

3号車は「オープンダイニング車両」。仕切りがないので開放感があります。

3号車の「オープンダイニング車両」

実は10年ほど前にも一度、「TOHOKU EMOTION」のデザート&アフタヌーンティーコース(復路、久慈〜八戸)に乗車したことがありました。甘い物だけかと思ったら、生ハムなどオードブルも数種あり、大変おいしく、飽きることなく食べられました。

お酒も好きなだけ注文できたので、「ここは天国か!」と大変気に入ったのでした。

ウェルカムドリンクを運ぶアテンダントさん

そして今回は初めてのランチコース。期待が高まりまくります。復路はブッフェスタイルですが、往路のランチコースは1皿ずつ持ってきてもらえるサービススタイル。

個室に入ってまもなく、ウェルカムドリンクが運ばれてきました。まずはこれで乾杯し、すかさず白ワインを頼みます。飲み物が完全になくなる前に注文する……いつもの酒飲みの頼み方をしてしまいました。

アミューズの数々

最初に箱に入って運ばれてきたのは美しいアミューズ。クジエール、甘エビのタルトレット、ホタテのミキュイ、パテ・ド・カンパーニュ、ニシンのピサラディエール。

どれも本当においしくて、ひとくち口に運ぶごとに感動しました。しかもこれが動いている列車の中でいただけるという驚き。ワインにもぴったりです。

言い忘れていましたが、ランチコースはフレンチのコースです。しかも見た目のとおり、かなり本格的。今回このお料理の監修を担当されたのは、東京にある「フロレゾン神楽坂」のシェフ、佐藤貢平氏。

ちなみに年2回担当シェフが替わり、メニュー内容は4回替わります。リピーターが多いのもうなずけますね。そういう私もすでにリピーターでした。

車窓から見える蕪嶋神社

おっと、お料理に夢中で、景色を見ていませんでした。車内アナウンスで気づき、ちょうど蕪嶋神社を通り過ぎるところを、写真に収められました。

何度も訪れる場所では、その場所を別の角度から見る、というのも一興です。昨日、歩いた蕪嶋神社を、今日は列車の車内から眺めている。不思議で楽しい感覚になります。

2皿めのポワソン(魚料理)

2皿めは魚料理が出てきました。真鱈のヴィエノワーズ ソースブールダルグ。鱈はさっぱりしたお魚ですが、片面がカリッと焼かれていて、ソースと共に食べると濃厚な味わい。付いてきたパンもおいしくて、残ったソースを付けてパクパクと食べきりました。

3皿めのヴィアン(肉料理)と私のアクスタ

3皿めのお肉、岩手鴨 胸肉のアビシウス風 発酵ブルーベリーは鴨肉が非常にやわらかくて、少し甘いソースともぴったり。お肉の中で鴨肉が一番好きという同行者は、おいしい! おいしい! と一気に食べてしまいました。

私はといえば、もったいなくて、ひとくち食べては赤ワインを飲む、を繰り返し、ちょっといい気分に。赤ワインはいつのまにか頼んでいました。

大漁旗でお見送り

「あっ海だ!」

またもや景色を忘れていましたが、視界がパアッと明るくなって、海沿いを走っていることに気がつき声が出ました。

すると、浜辺で大漁旗を振ってお見送りしてくださる方たちの姿が。わあ、うれしい! 「ありがとうございまーす!」と、こちらも手を振り返して答えます。

お見送りしてくださったのは、洋野町の「洋野エモーション」のみなさま。ますます旅が盛り上がります。とはいえ、そろそろ旅は終盤です。

デザート

最後にデザートの箱が提供されました。開けてみると、りんごのタルトレット、エクレアシトロン、ミニオペラ、洋梨のマカロンの4種が入っていました。

最初から見せるのでなく、箱を自分で開けた時の驚きなど、演出も考えられていて感心します。そしてどれも甘すぎず、おいしい。シードルとコーヒーをいただき、大満足しました。

まもなく久慈駅に到着です。いろいろと堪能していたら、あっという間に時間が過ぎていました。ああ、名残惜しい。そしてお料理は、期待以上でした。

八戸線は、2025年12月8日に起きた青森県東方沖地震により、一時は全線運休になっていました。こちらの取材はその数日前に行っていたので、ずっと心配しておりましたが、12月30日に全線で運行再開! 保線の方々の尽力に、頭が下がります。

そしてついに「TOHOKU EMOTION」も2026年1月9日から運行再開しました。すばらしい景色とすばらしいお料理、走る最高のレストランに再び出会えます。何度乗っても飽きないレストラン列車、ぜひ一度、体験してみてほしいです。

私もまた乗りに行こうと心に決めているので、その際は、一緒に乗ってくれる人を募集したいと思います。

 


byやすこーん

【プロフィール】
青森県出身。漫画家&文筆家。駅弁・駅そば・温泉・お酒を楽しむ鉄道ひとり旅が好き。食べた駅弁の数は2600個以上。著書に「ひとりで楽しむ鉄道旅 駅弁めぐり篇」(玄光社)、「イラストで読む!鉄道知識と旅の基本 鉄道イロハ」 (イカロス出版)ほか。「旅行読売」で「猫に駅弁」連載中。HP→yascorn.com

 

掲載されている内容は取材当時の情報です。メニュー、料金、営業日など変更になっている可能性がありますので、最新の情報は店舗等に直接お問合せください。

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