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クリエーティブ県あおもり❹ 青森を「体験」する料理づくりとは? – 新時代の“青森料理”のつくり手、成田陽平

クリエーティブ県あおもり❹ 青森を「体験」する料理づくりとは? – 新時代の“青森料理”のつくり手、成田陽平

弘前の日本料理「陽」の料理人、成田陽平さん


「青森にしかない」ものを生み出している最先端のクリエイターにインタビューを行い、青森が誇るクリエーティブ・マインドの秘密を探るインタビューの第4回。
今回は、弘前市で自身の店を構え、独自の「青森料理」で食通を唸らせる料理人、成田陽平さんにお話を伺いました。弘前という土地で、フランス料理と日本料理、二つの最高峰を経験した彼が、いかにして青森食材の個性を最大限に引き出し、新たな世界を創り上げているのか。成田氏が創り出す料理は、単なる日本料理の枠を超えた、新しい「青森料理」の誕生を感じさせます。

聞き手:クリエイティブディレクター嶋野裕介

※成田陽平 氏のプロフィールについては、こちらをご覧ください。
https://yo-hirosaki.com/profile/)


弘前→パリ→京都→弘前

嶋  野: 弘前出身でご実家がリンゴ農家と伺いました。幼少期の食の原点を教えてください。

成田さん: 実家がリンゴ農家で、祖母が畑もやっていました。子供の頃は、母の手料理に加えて、祖母が作る郷土料理、焼き魚とか刺身、漬物を食べて育ちましたね。畑が身近にあるので、山菜や採れたての野菜を調理するのを自然と見ていました。郷土の旬のものを食べるという環境は大きかったと思います。

嶋  野: その後、フランス料理を専門学校で学ばれ、東京での修業を経て、パリのアラン・デュカスで修業されています。そこから日本料理に転向された経緯が非常にユニークです。

成田さん: パリで2年間修業しましたが、当時のフレンチでは、地元食材をどう活かすか・大切に使い切るか、という部分が希薄に感じられて。ビザの問題もあって一度日本に戻ることになり、そのタイミングで京都の老舗日本料理店「菊乃井」に入りました。日本料理の技術を全く知らない状態だったので、「勉強し直したい」という探求心が強く働きました。

青森の新名物とも言える「新郷村の銀の鴨」の胸肉とモモ肉をロースト。付け合わせは、赤玉ねぎとカリフラワーを炭火焼き。ソースは実山椒と焦ネギをローストしたもの。

青森食材の個性を「マスキングしない」哲学

嶋  野: 1品目から驚きました。「赤カブの蕪蒸し」は赤カブとアワビがメインでありながら、地物のキノコなど他の食材が何種類も入っていました。いくつ食材を使っていらっしゃるのですか?

成田さん: 地物の赤カブを使ったカブラ蒸しなんですけども、下には陸奥湾のエゾアワビを使っています。肝は裏漉して餡に混ぜているのですが、今回はエノキとムキタケ、そして昨日買った地物の松茸など地元のキノコを数種類刻んで入れています。餡には陸奥湾のオオズワイ、その上にワサビです。

鮑と赤蕪のかぶら蒸し

嶋  野: 成田さんの料理は1皿に使われている食材の数が多いので、お品書きの読み上げがとても長いのが特徴的でした。笑
これは青森の食材の豊かさから来ているのでしょうか?

成田さん: そうですね。例えば、青森は山菜やキノコが本当に多様です。道の駅に行けば10種近いものが並んでいますし、天然のアユやウナギも手に入りやすい。私にとって青森は、まだまだ「掘り尽くせない宝庫」です。食材がこれだけいいんだから、使わないのはもったいないという発想です。

嶋  野: その多種多様な食材が、お皿の中で見事に共存しています。日本料理は出汁などで素材の味を「調和」させる、極端に言えば「マスキング」する傾向もあるかと思いますが、成田さんの料理には一つ一つの青森の食材の個性がどれもしっかり残っています。その上で、1皿に新しい世界がデザインされている。青森の全ての食材が、個性を消されることなく、でもそれらが1つの作品としてまとまっている料理。その意味で、日本料理を超えた、「新・青森料理」という感想を持ちました。

成田さん: 私が日本料理を学びながらも、どこかフレンチの視点を持っているからかもしれません。和食は出汁の力で素材の味を統一していく側面もありますが、私の場合は青森の素材の魅力をなるべく大事にすることを心がけています。

地元の栗と、きのこの炊き込みご飯。青森の道の駅では、地元の人が採った10種類近くのキノコが常に売られていて、成田さん自身がそれを買って回っているとのこと。

陸奥湾の白子を、酢飯と甘く炒めた長ネギの上に。ソースは香茸という地元のキノコでつくり、香りに胡椒。最後に地物のスイスチャードをパリッと焼いたもので食感をつくる。

この日のデザート。「青森県の川原結明茶をゼリーにしたものに、地物の紅あずま、ピオーネ、マスカット、いちじく、ラ・フランス、和梨、さるなし。上にはミルクのアイスクリーム。その上に塩味として大鰐町の赤味噌をフレークにしたもの」。地物の食材の個性を1つ1つ引き立てた上で、全体としても新しい美味しさを生み出されている。

料理の味より大切なこと:顧客体験のデザイン

嶋  野: 成田さんの料理はいま県内外の多くの方から高く評価されています。その秘訣は?

成田さん: 料理の味よりも、お客様が喜んで帰ってもらえることを一番に考えるようにしています。サービスはもちろん、お客様の入店から退店までの環境づくりですね。

嶋  野: 具体的にいいますと?

成田さん: 料理だけで考えると「お客様が美味しいと思った瞬間が、1つのゴール」になると思っています。でも、料理の味以外の部分、「どうやったらお客様がもっと喜んでくれるか」というサービスには終わりがない。お客様の履歴をチェックして、好みや苦手なものを把握するのはもちろん、トイレの清潔さやテーブルの拭き方など、料理が美味しい手前の部分をしっかりやろうという意識をスタッフ全員で徹底しています。

嶋  野: お客様の満足度を考えたときに、料理だけではなく体験全体からデザインする。これもまた、クリエーティブな思考ですね。その姿勢が「また来たい」という信頼につながり、お店のブランド力を高めているのだと感じます。
最後に、今後やりたいこと、目指すものはありますか?

成田さん:郷土の食文化を持続的に、もっと広げていきたいですね。キノコや山菜を取ってくれる人が途絶えないためにも、ちゃんとそこにも経済が回るように、もっと多くの人が訪れる形をつくったり、新しい人とのつながりを増やしていきたいです。
そのためには、今あるお店の形を超えたものにも、挑戦をつづけていきたいです。

成田さんご夫婦

嶋  野:素敵なお話をありがとうございました。


取材後記

成田さんの料理は、写真でみると一見「純日本料理」に見えると思います。でも、食べてみると、その味わいは複雑であり、青森独自の食材もあいまって「食べたことのない」体験を生み出していました。素材の持つ「個性」を殺さず、しかも多様な食材が同居することで、一つの皿に奥行きのある新しい世界を創出します。それは、単なる「地産地消」や「和食」の枠組みを軽々と飛び越え、成田さんにしか開拓できない「新しい青森料理」というジャンルなのかもしれません。

また、「顧客の体験すべてを、料理する(デザインする)」という考えは、スターバックスの“Third Place店舗設計”やAPPLE直営店の建物の設計にも通じるグローバルな思想に通ずるものがあります。実際に、お店では成田さんはもちろんスタッフさんすべての動き・気働きが完璧で、お酒が切れる瞬間がないなど、最高の飲食体験でした。
ぜひ、一度お店で体感してみてください。

最後の一品。白神の蕎麦粉でつくった蕎麦餅。地物の栗を餡にして、栗の渋皮煮なども混ぜ込み、炭火で焼く。最後にチーズのように栗をパウダー状に振りかけることで香ばしさが広がる。

 

Written by クリエーティブディレクター 嶋野裕介

【profile】
マーケティングプランナー、営業職を経て現職。国内外で100以上のアワードを受賞。著書「なぜウチより、あの店が知られているのか? ちいさなお店のブランド学」。
奈良美智さんとホタテが好きで青森にハマり、30回以上訪れています。青森最高です。


場所青森県弘前市北川端町36-3
TEL0172-40-0496
時間18:00~ (ドアオープンは17:30)
Webサイト
その他定休日:日曜日・月曜日

掲載されている内容は取材当時の情報です。メニュー、料金、営業日など変更になっている可能性がありますので、最新の情報は店舗等に直接お問合せください。

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