しらうおに賭ける男の生き様を見よ in 居酒屋レストランえび蔵(東北町)

しらうおに賭ける男の生き様を見よ in 居酒屋レストランえび蔵(東北町)

しらうおとは

みなさんは「しらうお」をご存知だろうか。
「白魚」と書くこの魚は、生きている間は体が透明で透き通っているが、水揚げするとすぐに白くなる、不思議な生態をしている。
青森県にとってゆかりのある海産物であり、県内東部に位置する東北町の「小川原湖」では水揚げ量が全国第一位。小川原湖は八甲田山が産んだミネラル豊富な水がたっぷりと含まれているため水産資源が豊富だ。しらうお以外にもシジミやワカサギなどの海産物が全国有数の漁獲量を誇る。

しらうおは天下人・徳川家康が愛した魚と言われており、江戸時代を代表する魚だ。透き通って見えるしらうおの脳の形が徳川家の家紋に見立てられたりと、当時は大変重宝されていたそう。東京の隅田川にもかつてはたくさんのしらうおが生息していたそうだが、都市開発の影響で長らくの間その姿を消していた。

長きにわたる蛯名さんの挑戦

しかし、しらうおに対する情熱と卓越した技術を持って、その魅力を県内外に広めている1人の伝道師がいた。それが蛯名正直さんだ。


蛯名さんは高校卒業後、横浜市で老舗すき焼き店に就職。その後地元の東北町にUターンし、長年の夢であったしらうおの提供に舵を切ったそう。
蛯名さんは飲食店の経営だけに留まらず、しらうおの価値や魅力を向上させるため、様々な挑戦をしてきた。そのうちの一つが隅田川へのしらうおの放流である。
蛯名さんはしらうおの魅力向上のため、研究を始めて約25年かけてしらうおの活魚化を成功させた。しかし、活魚化が成功したとしても知名度の向上は難しく、利用されることがなかった。そこで、東京の方々に認知してもらうために、しらうおの放流を行うことにしたのだそう。

蛯名さんが運営する「居酒屋レストラン えび蔵」にはしらうおに関する新聞記事が貼り出されている。蛯名さんのしらうおに対する熱量がうかがえる。

放流の実現にも様々な苦難が生じた。第一回目の放流は2011年11月。東京の市民団体からしらうおを隅田川に放流したいとの連絡があり、実行に漕ぎつけた。その際は50匹のみの放流となった。しかし、長年願ってきた隅田川のしらうお復活を実現させるためには規模が小さく、より規模を大きくして第二回を開催することを計画していた。その開催のために、蛯名さんは積極的に動いた。当時の東京都知事や総理大臣、徳川家の末裔に手紙を送り、しらうおの知名度向上に努めた。また、手紙だけでなく、しらうおの活魚を青森から東京まで自らの手で運び、関係者に提供した。その苦労が実らず、面会を拒否されることも少なくなかったそうだ。しかし、蛯名さんの積極性、そしてしらうおに対する情熱が実り、第二回の放流が2019年12月に隅田川で行われた。放流されたしらうおはなんと1万匹。反響は大きく、当時は新聞やTVなど様々なメディアで取り上げられた。そして、2024年10月に川崎市の多摩川河口でしらうおが半世紀ぶりに発見されたとのニュースが舞い込んできた。当時放流されたしらうおに由来するかどうかは不明だが、いずれにしても嬉しい。そう語る蛯名さんの顔は輝いて見えた。

食感が楽しいしらうおのフルコース

そんな蛯名さんが営業する「居酒屋レストラン えび蔵」。こちらのお店では貴重なしらうおのフルコースを食べることができる。
こちらの「シラウオ尽くし御膳」はしらうおの様々な食感を楽しむことができる。例えば、右側にあるしらうおの刺身はプチプチとした食感が楽しい。蛯名さんのおすすめは塩をつけて食べることだ。新感覚の食感をより強く味わえるとのこと。手前にある味噌汁と奥にある炊き込みご飯は、しらうおに火が入ることでしっとりとした食感を楽しめる。また、両者共に薄味で、しらうおの優しい味わいを弾き立たせるような味付けになっている。このように、しらうおの食感や味を最大限まで楽しむのにぴったりの御膳であるので、ぜひ現地でご賞味いただきたい。

これから

近年ではコロナウイルス、最近はしらうお踊り食いの停止など、様々な災難が降りかかるが蛯名さんは挑戦をやめない。水族館に展示用のしらうおを送ったり、しらうおに関する講演を行ったりと、現在でも精力的に活動を続けている。不可能なことを可能にし続けてきた蛯名さん。今後はどのような活動をしていくのか、目が離せない。

By y0da

居酒屋レストラン えび蔵

場所青森県上北郡東北町上北南4ー32ー542
TEL0176ー56ー5098
時間11:00〜14:00、17:00〜21:00
料金シラウオ尽くし御膳:5,000円(税込)

掲載されている内容は取材当時の情報です。メニュー、料金、営業日など変更になっている可能性がありますので、最新の情報は店舗等に直接お問合せください。

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